写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.11.01(第68回)
GNHは安全保障

 前回、直感力の大切さを少しだけ書かせていただきました。少し前までは直感力を要求されるのは、日々決断を迫られる経営者や情報を発信しなければいけないエコノミスト、さらには相場などをやっている人に限られていましたが、これから数年の大激変の時代には誰もが直感力を持たなければいけない時代になります。
 副作用のない正しい直感力をつけるには、大自然の用意している大変化を前に自分の心をより純粋にすることに努力して、自分の魂の叫びや思いに従った生き方をしていかなければなりません。このコラムのテーマになりつつある金融的なことを考える上においても、前回書いたように、常識的に考えたら危機は回避できますが、マクロに考えたら近いうちに必ず危機が来ると考えるべきだと思います。
 前者は、常識や既成概念やタブーにとらわれた考えで、後者はマクロに物事をみて現実を直視している考えだと思います。直感力を使う前の前提条件としてマクロにものを見る習慣をつけることがますます重要になってくるのだと思います。

 世界銀行の元副総裁の西水美恵子さんのセミナーというかワークショップに参加する機会がありました。西水さんは世銀という官僚組織を本気で動く集団に変えて、世界の貧困に真剣に取り組んで多くの実績をあげています。8月11日の当コラムに西水さんの著書を紹介していますので、よかったらご著書をぜひお読みください。
 本の紹介の時も書きましたが、私が西水さんの事を知ったのは随分前に『選択』という月刊誌にまだ現役の世銀の副総裁として連載を書いていらしたときのことだと思います。衝撃的だったのはブータンのいまではとても有名になったGNH(国民総幸福量)のことを日本で最初に紹介されたことでした。
 『選択』は船井幸雄も絶賛していますが、新聞には載っていない本当の情報が書いてあるとてもいい雑誌です。知り合いの新聞記者の人から聞いたのですが、大半の原稿は新聞記者が無記名で書いています。自分の所属している新聞のテーストに合わなかったり、衝撃が強すぎて新聞に書けないような記事を匿名で書いているのでとてもいい情報源になっていました。
 ただ、本当の情報はどうしても策略的な話が中心になるので、私は読むのがつらくて随分前に購読を止めてしまいました。そんな中でとても楽しみにしていたのは西水さんの連載でした。政治が貧困を作り出している状態や、ブータンの前国王のように一人の勇気ある本物のリーダーの存在でブータンのような人口が70万人しかいない小国が南アジアで一番長い間コンスタントに経済的にも成長するようになったことを読んで、策略があふれる世界の中で一服の清涼剤と感じていました。

 マクロに考えることの大切さを感じたのは、今回のワークショップでブータンのGNHの政策がヒューマニズム的な考えから生まれたものではなく、冷徹な安全保障を考えた末にたどり着いた結論であるということを教えていただいたからです。
 前述のようにブータンの人口は70万人程度です。そしてインドと中国という十数億人の人口を抱えている大国に挟まれています。
 象と虎に挟まれた蚊のような存在と、ブータンの人たちは自分たちのことを表現しています。だから、経済発展をさせて武器をいくら買ってもブータンの安全を確保することは不可能です。逆転の発想でGNHという概念を徹底させて国民が本当の幸せを感じるようになることがブータンの安全保障にとって最適の方法であるというすばらしい考えを思いつき、実行に移すことができたのです。

 金融のあり方もいままでと同じことをしていれば、GNHという考え方が確立する前のブータンのように、いつインドか中国(ユーロかドルの暴落)に侵略されてしまうかもしれません。つまり、とんでもないカタストロフィに巻き込まれて、すべてを失ってしまう可能性が高くなります。いままでとまったく違うというか正反対のGNHのような政策を考えることができてはじめて、私たちはソフトランディングできるのだと思います。
 ブータンの国のあり方を作った考え方は、ボトムアップとトップダウンを2往復したのだそうです。字が読めないお年寄りまでもが参加して、真剣に国の将来について村の寄り合いで語り合い、それを国が吸い上げてまとめたものを今度は村に落としていき、それをまたみんなが真剣に話し合ってという作業をした上でこの政策ができました。
 日本の金融危機も政府や日銀に任せておいても、それだけでは絶対に本質的な解決策は生まれて来ません。いま、必要なのは私たち一般人も本気になって政策のことを考えていく体制を作ることではないでしょうか。
 でも、やっぱりそのためには、いままでの慣習を断ち切れるだけの強力な力をもったリーダーの存在が不可欠です。あなたがもしリーダーであれば、あなたの組織はすでにあなたがこのことに気づくことで変えていくことができます。まず、自分の足元から始めてみてください。その積み重ねがボトムアップになってやがて日本が変わって行くのかもしれません。

『未来から考える経営』表紙画像
『未来から考える経営』
★船井勝仁の最新刊『未来から考える経営』(2012年10月発売 ザメディアジョン刊、1,200円(税込))が好評発売中!!

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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社) 、『未来から考える経営』(2012年10月 ザメディアジョン)などがある。
『未来から考える経営』表紙画像
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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