「“女船井”と呼ばれる経営者」の幸せになる生き方

このページは、船井本社グループのイリアール株式会社の代表取締役を２００６年から務める乗附なほみによるコラムページです。
舩井幸雄が経営術を実践的に教え、“女舩井”と呼ぶ唯一の女性経営者です。
経営者として、女性として、舩井幸雄の教えを活かした生活をお伝えしていきます。

万年筆づくりに関わって、１５年半。
１９９９年に「中屋万年筆」を立ち上げる際に、ホームページの製作をしたのが最初でした。

「中屋万年筆」は、プラチナ万年筆に５０年務めて定年を迎えた職人を集めて、
お客様の手に合った（書きやすい）万年筆を、
オーダーメイドすることをコンセプトにしたブランドです。

万年筆は、力を入れずにスラスラ書けるので、長文を書く文筆家の必須アイテム。
使い慣れた人には、ボールペンやシャープペンより、格段に書きやすいものです。
舩井会長もご愛用でした。

でも、「万年筆は書きにくい」という印象をお持ちの方も、多くいらっしゃいます。
使っていくうちに、紙にあたる部分が摩耗して滑らかになり、
その人にとって、とても書きやすくなるのが、万年筆の特徴なので、 買った直後の万年筆は、引っ掛かりを感じて書きにくい場合もあります。

また自分にとって書きやすい万年筆も、持ち方が違う人が使うと、
インクがかすれる、カリカリして書きにくい、ということも珍しくありません。
愛好家は、自分の万年筆を人に貸さないほど、その書き味は持ち方に影響されます。

逆に言うと、ペン先を調整すれば、好みの書き味にすることができます。
そうした修理・調整をするために、お客様の書き方を分析する内容を 職人たちは「カルテ」と呼んでいました。

その項目は、
筆圧（強い・普通・弱い）、ペンを持つ位置（先端近く・中心部・後ろ）、 ペンの傾き（立てる・普通・寝かす）、ペンの向き（左寄り・中央・右寄り）、 筆記速度（速い・普通・遅い）、字の大きさ（大きい・普通・小さい）、 書体（楷書体・行書体）、書く手（右手・左手）
です。

このデータを体系化して、職人たちは、ペン先を調整し、
（その人にとって）滑らかに文字が書けるようにしていました。

中屋万年筆では、最初から使う人に合った書き心地を実現するため、 ホームページで受注する際に、この「カルテ」をお客様に書いてもらおう、
ということになりました。

カルテを拝見しながら、職人と打ち合わせをしていたら、
職人が興味深いことを話してくれました。

「文字には、人が表れるんだよね。」

せっかちな人、頭の回転が速い人は書くのも早いし、
几帳面で神経質な人は、崩さずキッチリした字を書く。

「カルテを書いてもらいながら、話しているうちに、
性格も分析してしまってね、
大きな体の人が、極細の万年筆で小さい字を書いたり、
華奢な女性が、大胆な筆致だったりすると、
見かけと違って、こういう性格の方なんだろうな、と思うようになって 身近な人の字を見比べたら、手相・人相のように、
文字相があることに気付いたんだ。」

それ以来、私も出会う方の文字を見るようになり、

小さめの文字　×　カクカクとした書体
　＝　几帳面、こだわりがある、気付きが多い
太め・大きめの文字　×　流れるような滑らかな文字
　＝　スピードがある、頭が良い、段取り上手

という傾向を確認しました。
舩井会長は、後者でした。

自分だけが読むメモなど、無意識に書いた時のほうが、よくわかります。
特に表れるのは、枠線内に書いた文字。
枠を無視して大幅にはみ出ていたり、枠内にきれいに納まっていたり。
私は、枠にぴったり納まる大きさの楷書を、早く書きます。

メールやプリンターで印刷した文書では
わからないことまで伝わるのが手書き。

さて、あなたの文字はいかがでしょうか？