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リレーでつなぐ"ハート"の話

このページは、リレー形式でそれぞれの人に“愛”をテーマに、恋愛や家族愛、人間愛、パートナーシップ、コミュニケーション、大切な人への想い…などを自由に語っていただくページです。 それぞれの方に半月に1回、計3回ずつご執筆いただき、その方から次にご執筆いただける方を紹介していただく形をとっています。順々に人と人とのつながりの輪が広がっていきます。

2015.11.15(第104回)
♪今回の執筆者♪
尾庭 恵子さん(2回目)
(尾庭 恵子さんの詳しいプロフィールはページ下にあります。)
どのような愛をもって、“小さなこと”を始めてみますか?

 「ひとつだけ、希望を言うとしたら、あなたの笑顔を見ながら受講したかった。」
 先日行ったセミナーには、手話を必要とされる方がいて、手話通訳者が2名派遣されていたのですが、セミナー後、その聴覚にハンディのある方がそばに来てくださって、そうおっしゃったのです。  
 手話通訳者の手話はもちろん正しい。でも、温度や、トーンや、表情が、実際に話す私とは、当然ながらまったく違う。「言葉」は正しく入ってくるけれど、胸に響くのとはまた別なのだと、語ってくださいました。手話を必要とされる方は、当然ながら手話に注目しなくてはいけないので、実際に話をしている人のことよりも、ずっと手話を、もしくは説明のホワイトボードを見ています。実際の話し手を見ることができるのは、とても限られた時間になります。

 私は長男が先天性高度難聴なので、親子の日常会話的なレベルですが、若干の手話はできます。なので、そうやって直接話に来てくださったときは、拙いながらも、その方の手話を読み取り、その方に手話と口型を読み取っていただいて、コミュニケーションはとれます。「こうやって直接、笑顔を見ながら話ができるとすごくほっとする。またセミナーを聴きにくるから、間違ってもいいから、自分の手話で伝えてもらえたら、すごく嬉しい」と彼女は言ってくれました。 
 私は、息子が小さかったころ、「“てにをは”や、文法的に正しく語彙も豊富な日本語も大切だけれど、もっと大切なのは、どこまでも、伝えようとする気持ちや、わかりたいと思って諦めない心なんだよ」と、いつも話をしていました。なのに私は、正しい他の人の手話に頼り、自分で伝える努力を怠っていることに気づき、愕然としたのです。
 もともと、この内容の講座は、聴覚にハンディのある方たちにも伝えられるようになりたいと思っていました。でも自分の手話の力が追いつかなくて、なかなかチャンスがつかめずにいました。でも、手話が完璧になるまで、そういう方達へ届けることをあきらめるよりは、通訳に入っていただいてでも、届けていくことに意味も価値もあると思い、手話通訳付きで初めて実施したのが、1年半ほど前のことでした。その1歩は、とても大切だったと今も思います。

 その後、決意を新たにして、手話を学ぶ機会をつくったのですが、日常の多種雑多な仕事や出来事の中で、1年に1〜2回あるかどうかの、聴覚にハンディのある方向けのセミナーのために、道案内や旅先での会話などの事例をもとにした手話講座に通い続けることが、自分の中の優先順位として低くなっていってしまったのです。もっと緊急で、重要なことがたくさん差し迫っている中で、手話の習得は、私にとって、重要だけれど、緊急なことではない、という認識になってしまっていたのですね。
 完璧に手話ができるようにならないと、人前で手話なんてできるわけがない。と思っていた私。“完璧”って、どうなったら完璧なの? いつそうなれるの? そのために実際何ができているの? 年に1〜2回しかないからと、優先順位を下げているけれど、それは、自分の生き様や、誇りにかけて、それでいいの? そんな質問を自分にしながら、帰ってきました。
 たとえば、セミナーで話す内容の、大枠2時間分だけでも、どう表現するのか、マンツーマンで教えてもらって、自分で自分の言葉を表現できるようにしていくことは、手話ができる友達が何人もいるのだから、今すぐ始められるのではないだろうか。私自身、手話をまったく知らないわけでもないのだし、私は何をあきらめているのだろう。そんな生き方は、息子に恥かしくないのか。
 「あなたの笑顔を見ながら、受講したかった。」そう言ってくれた彼女の言葉にこたえるべく努力することは、愛情をもって生きる、ということに照らし合わせたときの、小さいけれど一つの大切な決意であり、覚悟であるような気がしました。一生懸命習得しても、それを使う機会はやっぱり、年に1〜2回かもしれません。その時に喜んでくださる方は、1人か2人かもしれません。でも、大勢を喜ばすことや、大勢に影響を与えることよりも大切なことが、世の中にはある気がしました。

 【わたしたちは、この世では大きいことはできません。小さなことを、大きな愛でするだけです。】

 とは、マザー・テレサの言葉です。まずは小さなことから実践を。小さなことでも実践し続けるには、こころの中に大きな愛が必要なのだと思います。これを読んでくださった方たちが、大きな愛の心をもって、小さなことを大切にし始めたとき、世の中も、より優しいものになっていくような気がしています。

Profile:尾庭 恵子(おにわ けいこ)

尾庭 恵子さん
大学卒業後、損害保険会社に総合職として入社。長男が、先天性高度難聴というハンディをもって誕生したことで、養育に専念。言語化しにくい息子と向き合いながら、「心の声が聴ける人になりたい」と痛切に思い始める。その想いが今の活動の原点となる。主人が経営する会社の総務・経理・事務全般においてサポートしつつ、2歳違いの男子二人の育児のかたわら、コーチングやフローについて、本格的に学び始めた。スタッフ充実にともない、実務からはずれ、従業員満足度向上、社内の空気づくり、チームワークづくりに力をいれた活動を展開。新事業部を発足し、組織をつくっていく上で必須の、モチベーション、コミュニケーション、マネジメント、リーダーシップ、チームビルディングを、グループワークを通して学んでいく研修を社内外で展開。中学・高校・大学での課外授業などでの研修も始める。
企業研修、PTA研修、あるいは個人セッションで大切にしていることは、スキルやテクニックではなく、マインドを育みたいということ。それは、聴こえにくい息子を育ててくる中で、文法や語彙力、発音(=スキルやテクニック)ではなく、伝えたいと思う気持ち、どうしてもわかりたいと思う気持ち(=マインド)を育てることが重要だと痛感したから。そしてそれは、聴こえにくいハンディをもつ彼だけに言えることではなく、すべての人に言えること。どの活動も、その想いがベースになっている。
2014年には株式会社トリニティ・アーツを設立。また、『だいじょうぶ〜心の声が聴こえるよ』を、ペンネーム美月ここねとして出版。家事、育児、仕事、ライフワーク、そして自分自身を大切にすることのバランスをいかにとっていくかを常に考えながら、会社役員・研修講師・ライターとして活動中。 
 
【主な研修・講演先(敬称略)】
神戸商工会議所、香川県中小企業同友会、下関商工会議所青年部、関西学院大学、畿央大学、加古川市立平岡中学校、姫路聴覚特別支援学校、シンガポール日本人学校、彦根PTA連絡協議会、介護福祉団体、家具製造販売店、保険代理店、飲食チェーン店など

尾庭恵子Official Site:http://haiji-k.jp/
美月ここねOfficial Site:http://mizukicocone.com/
著書『だいじょうぶ〜心の声が聴こえるよ』 2,200円+税 トリニティアーツ出版

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2014.11.15 :30年以上人の心に生き続けたことば (桐原 琢磨(きりはら たくま))
2014.11.01 :母の膝小僧 (桐原 琢磨(きりはら たくま))
2014.10.15 :星に願いを 月に祈りを (多伽羅 心彩(たから しんえい))
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2014.08.15 :自分への愛について (塩澤 政明(しおざわ まさあき))
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2014.07.15 :衣装から伝えられた 愛 (塩澤 政明(しおざわ まさあき))
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2014.06.15 :今を変えなければ明日を作れない (国府田 利明(こくふだ としあき))
2014.06.01 :支える愛 (国府田 利明(こくふだ としあき))
2014.05.15 :感謝するより大切な事 (佐東 界飛(さとう かいひ))
2014.05.01 :愛を知らない世代に伝えるべき事 (佐東 界飛(さとう かいひ))
2014.04.15 :家族の愛とは (佐東 界飛(さとう かいひ))
2014.04.01 :「おお、友よ!」 出会いと友情と歓喜の歌と (鈴木 律子(すずき りつこ))
2014.03.15 :「世のため人のため」「誠は天の道なり」と祖父は云い…… (鈴木 律子(すずき りつこ))
2014.03.01 :「歳歳年年人同じからず」されど、人の思いは連なっていく (鈴木 律子(すずき りつこ))
2014.02.15 :愛することと別離について (賀川 一枝(かがわ かずえ))
2014.02.01 :身近な者を幸せにするということ (賀川 一枝(かがわ かずえ))
2014.01.15 :「共に生きるために」人と農を根幹に据えるアジア学院から教えられたこと (賀川 一枝(かがわ かずえ))
2014.01.01 :マンデラさんの死と「I am not Chinese」 (伴 武澄(ばん たけずみ))
2013.12.15 :八田與一を偲ぶ台南での5月8日 (伴 武澄(ばん たけずみ))
2013.12.01 :スコットランドでの賀川豊彦再発見 (伴 武澄(ばん たけずみ))
2013.11.15 :大宮公園と本多静六 〜大宮からの報告 そのB〜 (新井 孝治(あらい こうじ))
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2013.10.15 :地域で一番の通り目指して 〜大宮からの報告 その@〜 (新井 孝治(あらい こうじ))
2013.10.01 :サクラモヒラという活動 〜バングラデシュに関わった17年 その3〜 (平間 保枝(ひらま やすえ))
2013.09.15 :サクラモヒラという活動 〜バングラデシュに関わった17年 その2〜 (平間 保枝(ひらま やすえ))
2013.09.01 :サクラモヒラという活動 〜バングラデシュに関わった17年 その1〜 (平間 保枝(ひらま やすえ))
2013.08.15 :封建時代が座っていた! (寺島 玲子(てらしま れいこ))
2013.08.01 :避病院への道 (寺島 玲子(てらしま れいこ))
2013.07.15 :八月二十四日 三貂(てん)角沖三マイル (寺島 玲子(てらしま れいこ))
2013.07.01 :猫の事務所 (室井 三紀(むろい みき))
2013.06.15 :義経が好き (室井 三紀(むろい みき))
2013.06.01 :琵琶と旅して (室井 三紀(むろい みき))
2013.05.15 :戦後の話(随想) (西郷 竹彦(さいごう たけひこ))
2013.05.01 :戦争への足音 (西郷 竹彦(さいごう たけひこ))
2013.04.15 :思い出の記 (西郷 竹彦(さいごう たけひこ))
2013.04.01 :ホワイトバッファローの祈り (美炎(みほ))
2013.03.15 :戻るところ (美炎(みほ))
2013.03.01 :風がふくとき (美炎(みほ))
2013.02.15 :愛を感じる豊かな風景 (廣田 充伸(ひろた みつのぶ))
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2013.01.15 :子どもの誕生と気付き (廣田 充伸(ひろた みつのぶ))
2012.12.01 :NICUのちいさないのち (宮崎 雅子(みやざき まさこ))
2012.11.15 :誕生の場で見つめてきたこと (宮崎 雅子(みやざき まさこ))
2012.11.01 :愛の記憶 (古川 遊(ふるかわ ゆう))
2012.10.15 :愛ゆえに人は苦しまねばならないのか。 (古川 遊(ふるかわ ゆう))
2012.10.01 :哀しみの果てに輝く美しさ (古川 遊(ふるかわ ゆう))
2012.09.15 :そして最高に愛しい人と出会った 米盛 つぐみ(よねもり つぐみ))
2012.09.01 :偉大なる愛の瞬間 至高体験 (米盛 つぐみ(よねもり つぐみ))
2012.08.15 :幾千民族 愛情と戦場 (米盛 つぐみ(よねもり つぐみ))
2012.08.01 :愛するということ (橋本 雅子(はしもと まさこ))
2012.07.15 :「呼吸」には力がある (橋本 雅子(はしもと まさこ))
2012.07.01 :私にできる「小さな愛」 (橋本 雅子(はしもと まさこ))
2012.06.15 :魂は、あなたが気づくのを待っている (鈴木 七沖(すずき なおき))
2012.06.01 :新しいコミュニケーション時代に必要なこと (鈴木 七沖(すずき なおき))
2012.05.15 :「人のご縁」が人生の変容を迫ってくる (鈴木 七沖(すずき なおき))
2012.05.01 :生きざまを残す  (比田井 和孝(ひだい かずたか)
2012.04.15 :どんな仕事でも人を幸せにできる。大切なのはその人の「あり方」 (比田井 和孝(ひだい かずたか))
2012.04.01 :船井幸雄先生の教え「何のために働くのか」 (比田井 和孝(ひだい かずたか))
2012.03.15 :いつも神さまは… (矢島 実(やじま みのる))
2012.03.01 :困難のおかげで気付けた愛 (矢島 実(やじま みのる))
2012.02.15 :116テンポがつないでいくれた愛 (矢島 実(やじま みのる))
2012.02.01 :父からの「愛のバトン」 (片岡 由季(かたおか ゆき))
2012.01.15 :自分を愛するということ (片岡 由季(かたおか ゆき))
2012.01.01 :いつかめぐり会うあなたへ (片岡 由季(かたおか ゆき))
2011.11.15 :「慈愛」の心を持つ努力 (堀内 康代(ほりうち やすよ))
2011.11.01 :愛を失わないためにできる事。 (堀内 康代(ほりうち やすよ))
2011.10.15 :愛を感じる「時」 (堀内 康代(ほりうち やすよ))
2011.10.01 :日常の中で小さな幸せを感じる方法 (眞田 まゆみ(さなだ まゆみ))
2011.09.15 :香りをつかって「愛」を呼び込む方法 (眞田 まゆみ(さなだ まゆみ))
2011.09.01 :スキンシップから目覚める自己革命(眞田 まゆみ(さなだ まゆみ))
2011.08.15 :大切なものを大切にするということ(水村 和司(みずむら かずし))
2011.08.01 :あなたのミッションは何ですか?(水村 和司(みずむら かずし))
2011.07.15 :悲しみのクラスター(水村 和司(みずむら かずし))
2011.07.01 :いちばんたいせつなことって、いったい何?(佐藤 伝(さとう でん))
2011.06.15 :恋は “カゼ”(佐藤 伝(さとう でん))
2011.06.01 :パートナーは、人が運んでくる(佐藤 伝(さとう でん))
2011.05.15 :単純なものに真実がある(中西 学(なかにし まなぶ))
2011.05.01 :本気で叱る、関わり続けるということ(中西 学(なかにし まなぶ))
2011.04.15 :今の自分がいる理由(中西 学(なかにし まなぶ))
2011.03.24 :人生を愛で満たす(原村 和子(はらむら かずこ))
2011.03.01 :愛のバトン(原村 和子(はらむら かずこ))
2011.02.15 :“愛”はすでに自分の中にある(原村 和子(はらむら かずこ))
2011.02.01 :“おめでとう”は器のバロメータ(佐奈 由紀子(さな ゆきこ))
2011.01.15 :“ありがとう”は魔法の言葉(佐奈 由紀子(さな ゆきこ))
2011.01.01 :愛を持って(佐奈 由紀子(さな ゆきこ))



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